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冬の蓼科生活

私の住む山小屋BFCは蓼科高原の1500m地帯にあり、冬場の寒さは北海道並みで十分な雪と凍結対策をしなければ住むことは儘ならない。今年で2回の越冬を果たしたが、その経験をまとめてみたので参考になれば幸いである。

前提として、私の山小屋は地元工務店が建てた寒冷地仕様のものである。また滞在期間は、蓼科7割、名古屋3割で二地域に居住するため、1週間程度不在にすることはしばしばある。建物ごとに仕様も違うので一概には言えないが、中古物件として購入した木造の山荘であった。恐らく春から秋にかけての利用が主で、冬対策は十分とは言えなかった。そこで2つの追加工事をし、その上での2回の冬の蓼科生活を経験した。その体験したトラブルから得た知見を生活ノウハウとして以下に示したい。

  1. 追加工事-1:合併浄化槽 環境保護と汚水タレ流し防止のため導入(住居設備)したが、この最大の成果は2つの悪臭対策である。1つ目は肥溜め式を水洗式に変えられことでトイレ臭が消えたこと。2つ目は雑排水の悪臭が消えたことである。勿論、寒冷地仕様のシャワートイレを導入したことで冬でも都会並みの快適さになった。但し、長期不在の場合はタンクの水抜きは必須である。排水は全て合併浄化槽内(不凍)でまとめてトラップ(においの逆流防止)するので、中間トラップは個別にする必要がなくなった。もし途中にトラップを設けると、不在時に不凍液を入れるなどの対策が必要になり、かなり面倒な事になる。
  2. 追加工事ー2:二重窓 あらゆる窓を二重化した。開閉を頻繁に行うリビング以外は、従来方式のもう一つ内側に窓を追加する方法を採用した。これは費用も安く結露し難いためである。リビングは前オーナーが既に複層ガラスに変えていたので、そのまま利用している。半日くらいであれば二重窓のお蔭で外気と数度くらいの温度差を保つことができるので、昼間は暖房を止めて外出しても問題ない。但し、夜間に外気がマイナス10度を超えるようだと室内もマイナス3度を超えてしまい暖房が必要となる。温度分布は場所によって違うので、生活しながら問題対応するしかないのである。そこで、これまで経験したトラブルから得たノウハウを以下にまとめてみた。
  3. 凍結問題ー1:室内側の水抜き 上水道の外部配管は全てヒーターを巻いてあるので凍結することはないが、戸内に入ると基本ヒーターは巻かれてない。即ち、山小屋に滞在中はマイナス3度以下にならないとの想定である。私は光熱費節約のため無用な暖房は避けるようにしているが、あくまで室内を零下にしない範囲である。従って、不在時には戸内も含めてしっかり止水&水抜きする必要がある。戸外は簡単だが室内は凍結してから気づいたものばかりで、下記がそのトラブル箇所と対応方法である。
    1. 台所の蛇口 ー 止水後、台所の湯/水側ともに蛇口を開放し完全に水を抜く
    2. 洗濯機のホース ー 止水後、蛇口からホースを外し溜り水をしっかり抜く
    3. お風呂 ー 止水後、湯/水側ともに蛇口を開放、シャワー内の溜り水も抜く
    4. トイレ ー 止水後、タンク内の水を流し出なくなるまでしっかり水を抜く
    5. 液体類 ー オリーブオイル、はちみつなど凍り易い液体は冷蔵庫に入れる
    6. 洗面台 ー 止水後、湯/水側とも蛇口は開放し完全に水を抜く
    7.       練り歯磨きや、凍り易いものは零下にならない場所で保管する
  4. 凍結問題ー2:お風呂の排水 これは排水管の構造的欠陥であるが、流し場からの排水管の一部が縁の下で傾斜5度が付いていないばかりか、逆傾斜が付いていて常時排水が溜まるような箇所があった。昨年は問題なかったが、今年になってその箇所が凍結し排水管が詰まってしまった。これを解決するには、お湯を沸かして縁の下にもぐって掛けてを数時間繰り返す羽目になってしまった。春になったら修繕工事して根本解決するが、今年は数十センチの積雪があり凍結し易かったのであろうか。建設時の構造欠陥が今になって発覚したものである。
  5. 凍結問題ー3:台所の氷瀑 水抜きせず2泊3日で山小屋を空けた時に発覚した。経験上マイナス5度くらいになると、鉄とゴムの熱膨張率の違いの問題で水道管からの漏水が起きる。この適度に滴り落ちる水が徐々に凍って、終いには排水管を埋め尽くすまでになる。あたかも滝が氷瀑したり、ツララが成長して行くような現象である。滞在中でも最低気温がマイナス10度を超えるような日は要注意である。寝る時に暖房を止めて朝起きてみるとシンクに氷が張っていたり、暖房を弱くして就寝した時にも朝起きると蛇口の根元に氷瀑ができ始めていたりを数度経験したことがある。従って、不在時には必ず止水&水抜きを室内も含めてしっかりやり、滞在時でも明け方に零下にならない程度の暖房はしておく必要がある。
  6. 雪の問題-1:駐車場の雪かき 蓼科も一晩で20㎝程度積もることは時々あり、数十センチ以上の積雪を想定しておく必要がある。数十センチも積雪すると駐車場は使えなくなってしまう。そのため、こまめに雪かきするか圧雪しておく必要がある。私の車は4駆SUVなので、雪かきするか車で圧雪するかをこまめにしている。長期間不在時に大雪が降ると、これはどうしようもない。除雪車が通ると道の両側に雪の壁ができる。これを直ぐに取り除かないと、雪の壁は凍の壁になってしまい容易には取り除けなくなる。そうなると駐車場には4駆SUVでさえ入れなくなってしまう。その対応も常に考えた行動が必要である。私の場合、長期不在から戻る時は1・2時間の雪かきと凍結対策の時間を考慮した予定を組むことにしている。
  1. 雪の問題-2:屋根の雪下ろし 私の山小屋は、雪が自然落下するような作りになっている。少し気温が緩んだり、室内が温められて雪が動き易くなると、突然轟音と共に雪が屋根から滑り落ちる。これは昼夜を問わず条件さえ整えば起きるので、分かっていても驚いてしまうのである。もう1つの注意点は軒下を通る時である。幸いにも一度も遭遇したことは無いが、目の前に落ちてヒヤッとし間一髪難を逃れたことは2・3回ある。埋もれるほどの積雪は無いが、怪我することは十分に考えられる。打ちどころが悪ければ、骨折やねん挫はあり得るので十分注意する必要がある。

屋根から落ちた雪が1m以上積みあがった様子

  1. 雪の問題ー3:アイスバーン化 雪の状態であれば車も人もあまり滑ることはないが、雪が溶けた状態で気温が下がるとアイスバーンができてしまう。こうなるとスタッドレスも無力で車の制動が利かなくなる。山小屋周辺は昼間に雪が解けるような気温でも、日が落ちると一気に零下数度になる。そこへちょっとの新雪が降るとさらに厄介で、アイスバーン化した箇所が隠れてしまう。酷いアイスバーン化は大寒過ぎて春に向かう時に置き易い。低気圧に伴う前線の前後で、雪の上に雨が降り前線通過後に寒波が来ると広い範囲でアイスバー化してしまう。こんな時は、フリージングレインと同じように外出しない方がよい。私は、カーブは必ず滑るものと思って注意深く運転している。カーブミラーを見て対向車があれば手前で止まり、カーブですれ違うのを避けるようにしている。また、歩くのもままならないことがある。都会で履くような靴底が滑りやすいものは山小屋では履かない。スノーブーツか長靴を履くようにしている。誰しも一度滑って転んで痛い目に合ってからでないと、これは分からないかもしれない。
  2. 雪の問題ー4:重量物化 バルコニーやアプローチなど木製でできたものに積もった雪は、できる限りこまめに取り除いた方が良い。長期間 雪に埋もれていると木は吸湿するので傷み易い。かと言って濡れないようブルーシートなどかけておくと、溜まった雪の重量は馬鹿にならず重さに耐えかねて抜ける危険もある。ある山荘のバルコニー崩落事件は、手すりもすっぽり埋まるように大きなブルーシートを掛け、そこに溜まった雪が解けても流れず蒸発せず、まるでプールの如く溜りに溜まって重みに耐えかねて起きたとの事。新雪は軽いが根雪や融雪は重いので、これが溜まるようなブルーシートの掛け方は、極めて危険なのである。

 

雪の中で生活していると色んな問題が起こるが、それらを順に解決してゆくのも案外面白いものである。都会では味わえない自然の凄さを感じる生活感である。やはり、これも自分で何でも解決してやろうと言うDIYの気持ちが必要だと実感するのである。だからDIYが苦手な人には冬の蓼科生活は絶対に勧めないのである。しかし、その苦労を吹き飛ばすほどの白い世界の美しさがここにはある。私は冬でこそ蓼科で生活したいと思っているのである。

 

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