BloomField Club ( Close Encounters of Healing )

草間彌生 ALL ABOUT MY LOVEを観て

日本が誇る前衛芸術家、草間彌生は松本市出身である。その縁で、松本市政110周年記念として、松本市美術館で「私の愛のすべて」と題する展覧会が始まった。早速、松本市美術館に観に行ってきた。私はこれまで、草間彌生の独特な世界、87歳の現在でも作品を作り続けるエネルギーや姿に、大いに感銘を受けて来た。今回の展覧会は、過去最大で松本でしかみ観られないとのことであった。展示室内は撮影禁止のため展示物の写真はないが、私見を織り交ぜできる限り臨場感が伝わるように紹介する。

何故、前衛芸術家になったのか

草間さんは松本の裕福な商家に生まれ、小さい頃から兎にかく絵を描くことが好きだったとのこと。しかし、不幸にも母親との確執があり次第に精神を病むようになった。14歳の時、最初の自殺未遂をした。以降、心の病と自殺願望が前衛芸術家・草間彌生を生んだと言っても間違いないだろう。現在も、うつ病にかかり抗うつ剤が放せない。ニューヨーク時代も自殺未遂常習犯と言われていたようだ。頭の中に次々と創作イメージが湧き出てきて、下書きも無くいきなりキャンバスに書きだす。同じような絵柄を幾つも幾つも根気よく描き続ける様子は、神がかり的な芸術家魂を感じざるを得ない。草間さんは絵画だけでなく、色々なオブジェも制作している。さらに詩や歌も作られている。即ち、心の奥に湧き出た情感を表現したい気持ちが先で、それが絵になるか、詩になるか、歌になるかは結果論なのであろう。だから画家ではなく前衛芸術家と自称しているのである。

今回観覧するに際し、珍しく音声ガイドを借りて回った。このガイドは良く出来ていて、単なるガイドでは無く草間さん自身が語り、朗読し、歌い、自分の思いを解説している。これを聞きながら観ると草間彌生ワールドの真髄に触れた思いになる事、間違いない。是非、音声ガイドを聞きながら観覧することをお薦めしたい。

展覧会の概要

松本市美術館の2F・3Fの2フロアーを使って展示している。最初の3Fは入るといきなり出迎えるのが、『命』と『シャングリラの鏡』のオブジェ。さらに進むと、暗闇に赤や青や緑の水玉模様の照明に照らされた部屋に、テーブルや椅子を配したインスタレーション作品が展示されている。そこを通ると、一気に草間ワールドに引き込まれてしまう。それを抜けると、渡米前の幼少の頃の絵から始まり、ニューヨークでブレークした時の作品などが次々に紹介されている。

2Fは暗闇の世界から始まる。本当に真っ暗な中を進むので、どの方向に歩いてゆけば良いか迷う程である。光と鏡をうまく使って、無限に続く造形を展示している。これが草間さんの心の中にある幻覚の中に引き込まれて行くかのような展示になっている。暗闇を抜ける明るいホールのような大きな部屋に出る。そこは撮影OKとなっている有名な『わが永遠の魂』が数十点展示されていた。聞くところによると、現在までに550枚制作されたうちの70枚で、半数が日本初公開作品とのこと。但し、正直言ってどれが初なのか分からないほど、沢山の作品を作り続けていると言える。草間さんにとっては、描いていないと生きていられないと言う事のようだ。

最後に、『南瓜へのつきることのない愛のすべて』と言うミラールームがある。数人ずつが20秒間観覧でいるようになっている。私が行った時は直ぐに入れたが、休日は混むので何十分かは待つ必要があるようだ。ミラールームに入ると、南瓜と自分が無限に映し出される。これは2016年に制作されたものであり、今なおこのような作品を作り続ける草間さんの発想力には驚くばかりである。

 

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