今年の蓼科の紅葉は色づきが良かったが、それでも黄色や褐色が主で紅色は少ない。紅葉の代表格は紅色のモミジで、これは何と言っても京都のお寺に名所が多い。そこで、今年は蓼科とはひと味違う京都の紅葉を観に行くことにしたのである。しかし、紅葉の京都は一年で最も混雑する時期なので、ゆっくり鑑賞することは難しい。そこで、時期を少し外し色付き始めたばかりの瑠璃光院に行くことにした。瑠璃光院は最近SNSで話題になっているお寺で、拝観料は2000円と高いが1日2000人に入場制限し混雑緩和をしているお寺である。
アクセス方法
京都へは、いつも車で行くことにしている。良く「道が狭く走り難い」とか「駐車するのが大変」とか言われるが、実際行って見るとそれほどでも無い。瑠璃光院の場合は近隣に駐車場がないため、出町の京都市営駐車場に車を停め電車で行くのが最良と思われる。叡山鉄道は1両もしくは2両編成の路面電車で、車両も窓を大きくして眺めを良くしたり、HIEIと言うお寺の荘厳さを醸し出した車両など観光用に工夫が凝らされている。この電車に乗るのも一つの楽しみと言えるだろう。
- 通常のワンマンカー(1両編成)
- 特別電車 「HIEI」
目的の八瀬比叡山口を出ると、直ぐに瑠璃光院チケット売り場の案内板があった。行って見ると10時半にも関わらず、長蛇の列ができていた。それでも平日で且つ色づき始めなので、30分ほどでチケットを買えた。但し、時間制のチケットなので、結局お寺に入るまでに1時間半かかったが、近くのお店の人曰く『去年の最高は5時間待ちだった』そうである。市営駐車場が1日最大1200円、電車代往復が520円に比べ、拝観料2000円が如何にも高すぎると思ってしまう。おまけに待ち時間の暇つぶし用に、ちゃっかり瑠璃光院自営のカフェを併設していた。
- 瑠璃光院への各種案内板
- 長蛇の列ができたチケット売り場
瑠璃光院とは
天武天皇が壬申の乱で受けた傷を「八瀬のかま風呂」で癒したとされ、八瀬は平安貴族の安らぎの郷として愛されていた。瑠璃光院は、明治時代は「喜鶴亭」と言う個人所有の別荘であった。戦後になり料理旅館として使われていたが廃業し2005年光明寺(浄土真宗)に買収され、瑠璃光院という光明寺の支院に生まれ変わった屋敷である。現存の建物は喜鶴亭時代の大正末期から昭和初期にかけて改築されたもので、12,000坪の敷地に240坪の数寄屋作りの建物と日本庭園を持つ寺院である。
二階建ての建物は京数寄屋造りの名人と称される中村外二の作で、自然を借景した日本庭園は佐野藤右衛門一統の作と伝えられている。特に、二階座敷から見る紅葉したモミジを配した庭の写真が、SNSで紹介されるとたちまち人気が沸騰し、多くの観光客が訪れるようになった。小さな建物にあまりにも沢山の人が押し寄せ、見学もままならなくなったため入場制限をするようになった。それでも、見所の撮影ポイントでは人が多すぎて景観を楽しむどころではなかったのが、残念でならない。
もともとは廊下に映りこむ庭の景色が話題になったが、今は光沢のある床を模した大きな座卓を2つ座敷に設置し、そこを撮影ポイントに提供している。これは明らかにインスタ映え狙いの人集めで、やや興ざめの感は否めない。また、その写真撮影の中心には中国人観光客が多く、その撮影マナーの悪さ強引さに眉をひそめたくなる。そんな中で押し合いへし合いながら、負けじとやっとの思いで話題になった2階座敷の写真を撮ることができた。
- 山門
- 玄関
- 2階座敷(SNSで有名になったシーン)
- 1階座敷(私が最も好きなシーン)
最後に
一通り建物内を見学したが、SNSで有名になった写真以外にさして見るべきものは多くなく、やや評判倒れに感じざるを得なかった。数年前に南禅寺界隈にある「有何荘」を見学したことがある。この時は、所有者の特別招待と言う限られた人数だったので、静かに落ち着いて有何荘でのひと時を楽しむことができた。やはり京都はゆっくり落ち着いて見たいものである。SNSで有名になればなるほど人が増え、その味わいが損なわれてしまう気がする。折角、入場制限するならもっと徹底してやって欲しい。その方が、ほんものの京都のワビサビを肌で感じることができるのではないか。それでこそ、また行って見たいと言う気になるであろう。
- 有何荘の座敷(茶席として利用)
- 有何荘の散策路からの景観

