ニューヨークは何度行っても魅力的な街である。それはいつも時代の中心にあり常に変化しているからである。今はトランプタワーが良くも悪くも話題になっているが、これまでも色々な問題を抱えながらも新しい価値観を創造して来た街である。その原動力は、レジリエンス(突然の困難に立ち向かう力)の高い国民性にあると思われる。アメリカは西部開拓時代から、多種多様な人種・考え方を受け入れることにより、新たな社会摩擦や問題が起きたとしても毅然として自由と平等のために立ち向かって来た。長い歴史の中でそれがアメリカン・スピリッツとなり、染みついていると思われる。それを最も体現しているのがニューヨークと言う街なのではないか。
- (2013年)タイムズ・スクウェアの名物看板
- (2013年)名物の裸のカウボーイ&ガール
例えば、私がアメリカ駐在中に起きた9.11事件、その後全米でテロに屈しないアメリカ人の姿を目の当たりにした。グラウンド・ゼロで亡くなった人の名前を刻んだプレートを見た時、9.11を乗り越えてテロと戦うんだと言う強い意志を感じた。また、ボストンマラソン爆弾事件後にボストンへ行った際、あちらこちらに ”Boston Strong” と書かれていて、アメリカ人のテロに屈しない意思の強さが印象に残ったのである。アメリカ人は困難な状態であってもプラス志向、前向きである。日本はその逆で、マイナス志向が強く直ぐに悲観的な話が世間に蔓延してしまう。だから未だに戦争の呪縛が解けないのである。
- (2002年)9.11の1年後 画面左端に昔は貿易センタビルがあった
- (2013年)爆弾テロの半月後 爆破で被害を受けたレストランの前
いつもニューヨークへ行くと「よくもこんな人種のルツボの中で、不安定・不安全な環境の中で、逞しく生きられるんだ」と感心してしまう。これを支えているのは、リベラルな自由・平等な土壌が根付いていることで、そのお陰でアメリカン・ドリームも生まれるのである。アメリカ人なら誰しもアメリカン・ドリームが得られる可能性を持っており、その機会満載なのがニューヨークなのであろう。
難しい話はこの辺にして、私が3度ニューヨークを訪問した時の楽しみ方について2つ紹介しよう。
セントラルパークでの朝ラン
セントラルパークはマンハッタンの北部にある巨大な公園、まさに都会の中のオアシスである。ニューヨーカーはこの公園をこよなく愛していて、朝は仕事前にランニングやサイクリングを楽しむ人が多いと言う話を聞いていた。2013年に初めて公園の近くにホテルを取り、ニューヨーカー気分で朝ランを楽しんだのである。
- (2013年)初日のランニングコース
- (2013年)2日目のランニングコース
実際に走って見ると、平日朝の皇居周回ランと比べれると10倍以上の人がいたのには驚いた。中にはベビーカーを押しながら走るママさんグループも居たのである。さらに驚いたのは、そのママさんたちがベビーカーを止めて階段でアップダウンをやり始めたのである。しかもその間、ベビーカーには専任の監視役が付いていたのである。これは産後のエクササイズ・プログラムの一環でやられているのかもしれないが、走るベビーカーと言った感じであった。そのうち日本でも産後のママさんたちの間で流行り出すんじゃないかと思ってしまったのである。
- (2013年)セントラル・パークの中心にある池
- (2013年)桜のような花が咲く中を走る人たち
皇居周回ランと比べると、公園内は道路・通路が整備され、自転車用、ランニング用、散歩用に層別され表示もしっかりされている。それでいて日本と違って入場料などは取らず、本当の意味で市民の憩いの場になっているのである。また、ひとたび公園内に入ってしまえば、喧騒な都会の姿がウソのような緑溢れる別世界に浸れるのである。公園内を一周すると10Km程度は走れるが、その後すぐ観光に出かけるので7Km程度に留めておいた。60歳でマラソンを始めた私にとって、セントラルパークで走ることは一つの夢であり、格別の達成感があり2日間走ることができたのである。
- (2013年)左がランニング用、右は自転車用
- (2013年)元の地形を生かしつつ緑が多い
夜のブロードウェイ
ニューヨークへ行く目的の一つは大人の夜を楽しむことである。その一つは何と言っても一流のジャズを聴くこと、一流のミュージカルを見ることである。この分野に素人の私にとっては新しいものを聴いて見て発掘することなんかはできない。兎に角、有名なお店へ行って見よう、日本でも知られた有名なミュージカルを見てみようである。結局のところ、ニューヨークへ行けば必ず夜のタイムズスクウェアに一度は足を踏み入れたいと言う、単なるお上りさん旅行者なのであろう。それでも自然とそうしたくなる何か言葉に表せない魅力があるのである。
ミュージカルなどのエンターテーメントは、ほとんどネットで日本から予約できるので便利である。システムは日系旅行代理店が提供するものや現地のチケット・システムなど様々であるが、私は駐在時代からticketmasterをよく利用していた。これはスポーツ・音楽・映画などイベントは何でも予約できる。チケットの受け取りはシステムによって違いはあるが、郵送してくるもの、e-Ticketになっているもの、Will Call窓口で受け取るもの等がある。私は最も便利なWill Callを利用することが多かった。
- (2003年)ブロードウェイの劇場街
- (2003年)予約して観劇したAIDA
ジャズはどちらかと言うとチケット販売と言うより、レストラン予約に近い。食事付きや飲み物付きなど様々である。これまでに Birdland、Village Vanguard など超有名なジャズクラブしか行ってない。何故ならそれほどジャズに詳しい訳ではなく、何となく聞いてるのが好きな方であり、間違いの少ないクラブへ行ったまでである。それでも行くと老舗のクラブの歴史を感じ、ジャズには直ぐに雰囲気に溶け込ませてくれる不思議な力を感じる。要するに、ジャズもミュージカルもあまり内容を講釈せず雰囲気を楽しむことが最重要であると思っている。ニューヨークの街自身が、世界をリードする最先端の街と言う雰囲気を持った場所であり空間なのである。
- (2003年)NYで初めて行ったジャズクラブ Birdland
- (2013年)NYのジャズクラブの老舗 Village Vanguard
二つの面からニューヨークの魅力について記述したが、あくまでこれはアメリカの一つの側面に過ぎない。ニューヨークの魅力は、人間の多様性が最大限に生かされる街、だからこそ世界中の才能ある人たちが集まって来る。トランプ氏の様に、人の往来を制限してしまっては、何時かその魅力は消えて行ってしまうであろう。自由の女神が何故ハドソン川の入り口で松明を持って海に向かって立っているか、トランプ氏は知っているのであろうか。

