アメリカは大自然が豊かに沢山残されている国である。日本に比べると国土が広大だから当たり前と言えるかもしれない。しかし、それだけでは無くアメリカ人は自然を守り大切にする努力をそれなりにしているからだと感じるのである。その代表格がイエローストーン国立公園である。1806年に非インディアンとして初めてジョン・コルター訪れたのち数十年経って初めて知られるようになった。1870年に本格的な調査がなされ1872年に世界最初の国立公園となったのである。
- イエローストーン国立公園を示す看板
- ルーズベルト・アーチ(北の入り口)
イエローストーンの魅力は、地球の営みを感じさせる火山活動と動物の生態である。またこの南には美しい山並みと湖が魅力のグランド・ティトン国立公園がある。平地から約2000mの山々が突然隆起したアルプスのような山容は、アメリカを代表する山脈と言えるであろう。本稿ではこれらを3つの視点で紹介しよう。
- グランド・ティトン国立公園を示す看板
- ジャクソン湖とティトン山脈
イエローストーン国立公園の「火山活動」
イエローストーンは大きく5つの地域に区分される。中でも有名なのはカイザー・カントリーにあるオールド・フェイスフルの間欠泉(英語でガイザー)である。熱湯が約1時間半ごとに数十メートル噴き上げる。他のガイザーと比べると噴き上げる時間が予測されていて、ホテルの掲示板で案内されている。噴き上げる時間近くになると、どこからともなく人が集まってきて1~5分のショータイムが始まるのである。従って、誰でも見られスケールも大きいので人気がある。
- オールド・フェイスフル・ガイザー
- 偶然にも噴き上げ始めたガイザー
次に見どころとなるのが温泉である。中には人が入れるものから、地球のマグマから直接湧き出しているような恐ろしいものまで数多くのものがある。実にその様子や色合いは神秘的である。一説によると、このイエローストーンに地球上の半分の温泉があると言われている。それほど巨大な温泉の湖が多数あると言うことである。
イエローストーン国立公園の「動物たち」
イエローストーン内には、山、平原、川・湖、峡谷など全く趣が違う顔を見せてくれるところである。その中で広大な草原を中心としたヘイデン・バレーと呼ばれる地域があり、ここには多くの動物たちが生息している。中でも代表格は、バイソン(バッファローとも言う)とエルクである。この草原地帯の真ん中をシ―ニック・ドライブが通っている。ここを走ると、平然とバッファローやエルクの大群がゆっくりと横切ってゆく。勿論、動物優先なので車はゆっくりと、動物を驚かさないように通らなければならない。車を怖がらないので目の前を悠然と通っていく場合もあり、車の方が立ち往生してしまうのである。
他にもビーバー、ムース、グズリーなどが生息しており、野生動物の宝庫である。
- バイソンが横断中のため渋滞中
- 車を降りてバイソンを背後に記念撮影
- バイソンやエルクが生息する大草原
- ルーズベルト・ロッジ入口のアーチ
宿泊施設は公園内にも有名な宿はあるが数が少なく高額で、予約もなかなか取れないことがある。でも、来たからには園内の宿泊施設を利用するのがおススメである。私は運よくもっとも有名なオールド・フェイスフル・インに1泊することができた。また、運よく部屋からカイザーが噴出すのを見ることもできた。公園外の近郊の街にも観光客用のホテルが立ち並んでおり、これらは値段も安く予約も容易なので利用しやすい。この時は、最初に北の入口 ガーディナーの街に1泊、帰る時に西の入口 ウェスト・イエローストーンにそれぞれ1泊ずつし、公園内での宿泊を減らすことにした。
- オールド・フェイスフル・インの駐車場
- フロント横のイエローストーン・ポスター
- ウェスト・イエローストーンの街のホテル
- ホテル内に飾られているムースのはく製
グランド・ティトン国立公園
団塊の世代の人なら分かると思うが、グランド・ティトンは懐かしき映画「シェーン」の撮影地なのである。今で言うならシェーンの聖地である。当時の小屋は火事で焼失してしまっているが、「シェーン! カムバーック!」と叫んだ時の風景は今でも見られる。草原の遥か彼方に荒々しいティトン山脈が行く手を阻むように佇む景色を見ると、つい映画を思い出し叫んでしまいそうになる。公園の南端にトランスフィギュレーション礼拝堂があるが、ティトン山脈が迫る位置に建っていて大変絵になる場所である。広大な草原から見る標高差2000mの山並みはアルプスのように素晴らしい景観で、眺めているだけで心癒される風景である。
- 撮影に使用された小屋があった場所付近
- トランス・フィギュレーション礼拝堂
- 大草原をカウボーイ気分で乗馬
- ジャクソン・レイク・ロッジのテラスからの眺め
このように半世紀たっても全く変わらぬ景色が残されているのは、ここが1929年に設立された国立公園だからである。アメリカは、美しい自然を守るための国立公園と言う仕組みを作り、徹底的に管理し保護している。例えば、オオカミが絶滅に瀕し生態系が崩れてしまうのではないかとの危惧が持ち上がると、オオカミ復活大作戦を展開したのである。今ではようやく灰色オオカミがイエローストーンにも戻りつつあるようだ。

